大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪地方裁判所 昭和53年(ヨ)4589号 決定

申請人(債権者)

ドクトル・カール・トマエ・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング

右代理人弁護士

原増司

外三名

被申請人(債務者)

全星薬品工業株式会社

右代理人弁護士

品川澄雄

外一名

右当事者間の頭書仮処分申請事件につき、当裁判所は申請人に金三〇〇万円の保証をたてさせたうえ、次のとおり決定する。

主文

1  債務者は昭和五四年八月一九日まで別紙医薬品目録記載の医薬品の販売を停止しなければならない。

2  前記期限までの間、債務者の右医薬品に対する占有を解いて債権者の委任する執行官にその保管を命ずる。

3  債権者のその余の申請を却下する。

理由

第一特許権に基く仮処分申請について

一〜六〈省略〉

七よつて、債権者の本件特許権に基く仮処分の申請は叙上説示の範囲でこれを認容し(本件においては前示のとおりその被保全権利の存続終期が明確であるから特にその趣旨を主文にも明記し)、その余は失当としてこれを却下する。

第二商標権に基く仮処分申請について

一債権者が次の二つの商標権を有し、これが昭和三五年一二月一〇日相互に連合の登録されていることは当事者間に争いがない。

1  出願 昭和三三年五月二二日(願昭三三―一四三四二号)

出願公告 昭和三四年一月一九日(公告昭三四―二九号)

登録 昭和三四年七月一日

登録番号 第五三八四五九号

指定商品 第一類(化学品、薬剤及び医療補助品)

登録商標 別紙目録(四)の(一)のとおり

2  出願 昭和三四年九月二九日(願昭三四―二九〇〇九号)

出願公告 昭和三五年五月二八日(公告昭三五―一〇五二三号)

登録 昭和三五年一二月一〇日

登録番号 第五六一三九二号

指定商品 前同

登録商標 別紙目録(四)の(二)のとおり

二債務者が債務者製品の包装に別紙目録(五)の(イ)および(ロ)記載の標章を附して販売し、またこれを債務者製品(ジピリダモール)に関する公告に附して展示し頒布していることも当事者間に争いがない。

三債権者は債務者の使用する右(イ)(ロ)の標章はそれぞれ前記(一)(二)の登録商標に類似する旨主張し、債務者はこれを争い、ことに債務者使用の(ロ)の標章については片仮名でペルミルチンと一行に横書してなる文字商標が指定商品第一類として商標登録第一三四二三六四号をもつて成立しており、債務者は昭和五三年九月一日その権利者辻庄一郎から通常使用の許諾を受けている旨弁疎している。

四そこで按ずるに、本申請についてはその当否を早急に判断するため、便宜、債権者の被保全権利に関する主張の当否よりも保全の必要性の存否について先に検討することとし考えるに、債権者の申請の趣旨中(一)債務者製品の包装に(イ)(ロ)の標章を附することおよび附したものの販売の停止を求める点については、すでに説示したところにより債務者製品自体の販売が差止められることによりこれに附随して事実上停止されることが明らかであり(債務者がジピリダモール以外の医薬品の包装に(イ)(ロ)の標章を附するおそれがあるとの疎明もない。また、本件仮処分による債務者製品自体の販売差止効が失効した将来の段階のことについては今その停止を求める緊急の必要性をみない。)、(二)債務者製品に関する広告に右(イ)(ロ)の標章を附して展示頒布することの停止を求める点についても前記包装に関する場合ほど密接に附随するものとはいえないとしても、やはり前記仮処分の執行に関連して事実上債務者のそのような所為は停止せざるをえなくなる類いのものであることは否みえないところである(債務者が債務者製品の販売停止を命ぜられながらなおその販売に関し広告することを不正競争防止法一条一項五号に照らしても法律上の疑義が存するし、債務者の弁疎の全趣旨に照らすと、債務者が敢えてこれをするおそれがあるとも思われない。その他の注記すべき説示事項については前記(一)の説示中の括孤内参照)。

五そうすると、債権者の商標権に基く仮処分申請については被保全権利について検討するまでもなく保全の必要性がないからこれを却下する。〈以下、省略〉

(畑郁夫)

別紙目録(一)〜(五)〈省略〉

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例